個人再生における退職金の取り扱いについて

個人再生

債務整理

カードローンやキャッシングなどの借金が積もって返済が滞ってしまった場合には、そのままにしておくと利息によってさらに返済が困難となるおそれがあります。このような問題を解決するための方法は債務整理とよばれており、本人のその時点における経済力や裁判所を通すかどうかなどの手法の違いによって、自己破産をはじめとするさまざまな種類に分かれています。そのなかでも条件しだいで返済の余地がある場合には、本人が管轄の地方裁判所に申し立て、個人再生という方法を採用することができます。
この個人再生が認められた場合には、これまでの借金の返済の一部が帳消しとなる代わりとして、再生計画とよばれる計画書にしたがって、残りの借金を確実に返済することが求められます。ただし債務免除と残りの金額の分割払いによって毎月の返済がしやすくなるため、借金をした債務者の立場でのメリットが大きいことは確かです。自己破産のように生活そのものがまったく破綻してしまっているケースとは異なり、これまでの生活を維持し、立て直すことを目的としている点も、他の債務整理の方法と比較したときの特徴です。

個人再生と退職金

個人再生をするにあたっては、借金をした債務者がその時点で持っている資産に応じた金額は最低限、計画的に支払いをしなくてはなりませんので、まずは資産がいくらあるのかを計算することが重要になります。現金や銀行預金などは当然ながら資産に含まれますが、そのほかにもサラリーマンなどとして会社勤めをしている人の場合には、退職金がどれほどあるかを検討しておくこともたいせつです。
申し立てる時点ですでに会社を退職し金銭として受け取っていれば資産になり得るのは感覚的にもわかるところですが、実はまだ支払いが済んでいない退職金についても資産に計上されることがあります。この場合は将来的にお金を受け取る権利、すなわち債権という形式での計上となりますので、資産に応じて借金の残りを支払うという原則にしたがえば、あまり債務免除の金額が増えない可能性も考えられます。
もっとも退職が遠い将来の場合には、それまでに会社が倒産するなどして受け取れなくなってしまうおそれもあり、確実性に乏しいことに配慮して、見込額の8分の1相当を計上しておけばよいというのが基本的なあり方です。この見込額も個人再生計画が認可された時点で退職した場合を基準としますので、通常は会社に請求して見込証明書とよばれる書類を発行してもらい、そこに書かれている数字を根拠とすることになります。

退職金の差し押さえは禁止されている

また退職の時期がごく近くに迫っている場合には、満額が支給される確実性が高く、見込額の8分の1を採用して計算することは適当ではありません。この場合はやはり実際に受け取れるであろう金額が根拠となりますが、退職金は差押えが禁止される債権としての特殊な法的位置づけがありますので、満額を計上するわけではないことに留意すべきです。退職金は一度に多額の金銭が給付されるとはいっても、会社を辞めたあとの人生を通じて、生活費などとして必要になるものですので、かなり手厚い配慮がなされています。退職金のなかで差押えが認められるのはその4分の1までの金額ですので、個人再生においても目安として用いられます。
このように個人再生をしようとする場合には、そのことによって退職金が受け取れなくなってしまうおそれはありませんが、資産のなかに計上されるため、計算しだいで債務免除の金額が増えない可能性も否定できません。このあたりは法律がかかわるきわめてテクニカルな問題ですので、法律にくわしいプロの弁護士に相談をした上で、メリットができるだけ多くなる方法を検討しておくのが適切といえます。